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塩野七生作品の『ローマ人の物語』より
『キリストの勝利』です。
この大作も残すところ、あとわずかになってきました。

皇帝はコンスタンティウス、ユリアヌスとつづいていって
さいごはローマ帝国を東西に分けたテシオドス帝までの時代です。
タイトルの通り、キリスト教が公認され
ローマの国教となっていきます。
特に下巻については、ミラノ司教アンブロシウスが
帝位にはついていませんが、
フィクサー的な存在としてとりあげられています。

現代は信教の自由が認められていますので、
この巻の主役であるキリスト教に対しては
どことなくエキセントリックに感じてしまいます。
それでは歴史をわかるってことにならないわよって
作者の塩野七生氏に怒られそうですね。

皇帝ユリアヌスについては、次に名作『背教者ユリアヌス』を
紹介する予定なので、更新をお待ちください。
ただ、全3巻の大作なのでいつ更新できるかは疑問ですが。
大作『海の都の物語』です。
サブタイトルに「ヴェネツィア共和国の一千年」
とあるように、千年続いた都市国家
ヴェネツィアを描いた作品です。

ローマ帝国崩壊後、ラグーナのなかの
島に杭を打ち込んで建国されたヴェネツィア。
世界的にも美しい町として知られていますね。
そのヴェネツィアが共和国となって
貿易によって繁栄を誇り、そして衰退していった軌跡が
非常に興味深いです。

同じ作者の『ローマ人の物語』よりも
20年近く前に著されていますが、
合理的精神がローマとの共通項なのかなと思ってしまいます。
まあ、ヴェネツィアを非常に身近に
感じられる作品なので、
旅行に行く前に読んでいくと面白いかもしれません。
文庫通巻でいうと、35~37巻です。
『ローマ人の物語』シリーズの『最後の努力』。

ここでは、ディオクレティアヌス帝と
コンスタンティヌス帝の2人の皇帝の時代に
光が当てられています。
いちおう、高校の世界史では必ず覚える名前ですね。
ディオクレティアヌス帝の場合は、
ローマ帝国を分割統治をした皇帝として、
コンスタンティヌス帝はキリスト教を保護した皇帝として。

ローマ帝国の再興をめざしてとられた政策が、
分割統治であったり、キリスト教の保護であったりするわけですが
その背景がしっかり頭に入るように
帝国の状況を詳述してくれている作品ですから、
単に暗記しただけの高校時代が
かなり残念に思えてきます。

結果を言うと、この2人の皇帝によって
再編されたローマ帝国は
こののち100年程度を延命することになりました。
そういう意味では、
覚える価値のあるローマ皇帝なんだな、と思います。
塩野七生作品の『ローマ人の物語』から
文庫通巻32,33,34巻にあたる『迷走する帝国』です。

紀元3世紀になって、ローマ帝国が
かなり揺さぶられる時期にあたっており、
皇帝が次々とすげ替えられていく時代です。

このあたりの消息については、
たとえば、大浴場で有名なカラカラ帝であったり
次の読書に関係するのですが、ヘラガバルスであったり
単語でしか知らないという感じで
まったく知識がありませんでしたので
読んでいて、かなり勉強になりました。
ただ、あまりにも目まぐるしすぎて
おそらく2週間後くらいには忘れているでしょう。

ローマ皇帝の権威がかなり低下して
簡単に取って代わられるあたり
やはり日本の歴史の特異性というんでしょうか
皇統の不思議を感じました。
そのあたりもたぶん作者にも深い洞察が
あるんでしょうね。

しかし、物語としては
興隆期のほうが面白いのは否めません。
塩野七生作品の『ローマ人の物語』
文庫通巻29~31の『終わりの始まり』です。

皇帝マルクスアウレリウスアントニヌス、コモドゥス
なか2人挟んでセプティミウスセヴェルスと続く
ローマ帝国が落日に差し掛かる時代を追っていきます。

まずはアントニウスピウスの再評価からはじまり
五賢帝の一人とされるマルクスアウレリウスを
時代の流れを必死に見極めようともがく人物像にとらえなおす
という前半が見せ場だと思います。
それからは、「愚帝」の時代、内乱と続き
軍人皇帝時代に突入して
ローマ帝国が少しずつ国力を落としていく
凋落のはじまりを描き出していきます。

この作品はやはり面白くて
読みだすとなかなか止まりませんでした。
ただ五賢帝のところを読んだのは
半年近く前だったので、
もう少しスパンを短くしたほうが良かったかと
すこし後悔をしてました。

ローマはもともと多神教の文化です。
そこにキリスト教がくいこんでいくという流れもあります。
キリスト教をどうこう言うつもりはないのですが、
作者は当時の社会からみたキリスト教を
けっこうシビアにとらえていて
なるほどな、と感じさせられます。