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楚漢戦争のころを題材とした
5つの短編からなる
宮城谷昌光の短編集『長城のかげ』です。

『逃げる』
『長城のかげ』
『石径の果て』
『風の消長』
『満天の星』

季布、盧綰、陸賈、劉肥、叔孫通と
項羽と劉邦にまつわる人々を
色々な視点で見ることができるのが
面白いのではないかなと思います。

項羽は他人を侮ってしまいがちで
劉邦は天下統一後に猜疑心にさいなまれるということで
人情の移り変わりやすい世の中にあって
5人に共通するのは、
自らを失わなかったことなのかな、と。

短編で読みやすいです。
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2012.10.27 『花の歳月』
宮城谷昌光作品の『花の歳月』です。
文庫版で1冊ですが、びっくりするくらい
大きな字のため、実質的には
長編というよりも中編なのかな、と思います。

はなればなれになってしまった
猗房と広国の兄妹が、再会するまでの話。
と書くと味気ないですが、
猗房はのちに漢の文帝と結婚することになる
シンデレラなんです。
そして、広国のほうは姉と別れた後
人攫いに連れ去られてしまいます。

もともと史記にも載っている
感動的なストーリーなのですが、
この作者の筆に乗るとさらに
さわやかさがでて、読後感が非常にいいです。
火坂雅志作品の『太平記鬼伝』です。
副題が児島高徳ということで、
南北朝時代の南朝方が中心に描かれています。

しかも、児島高徳で有名な桜の木に
十文字の漢詩を書いたところは、
カットされており、
その後の後醍醐天皇奪還から始まります。

建武新政で論功から外されたり、
湊川の前哨戦でけがを負ったりと
太平記の世界で言う、メインどころから
外されっぱなしな感じもありますが、
逆にそれが真実っぽいです。

山伏勢力を生かして
南朝方に貢献する児島高徳。
裏切りが当たり前の世の中で
一人、節を守り通します。

実のところ、実在さえ疑われているようで
戦前は論争まであったようです。
そんな人物を主人公に据えた
作者の心意気がうかがわれます。

足利、楠木などとは一味違った
側面からの南北朝時代を知りたい人には、
おススメかもしれません。
2012.10.22 『楠木正成』
今回は、小説家の作品ではなく
歴史学者、しかも東洋史学の専門家の
植村清二作品『楠木正成』です。

伝記と言うのか、論考と言うのか
ジャンルわけが難しいのですが、
以前に記事にした宮崎市定『隋の煬帝』など
「ま、いいかな」の前例があるので、
記事にしてしまいました。

楠木正成が記録に登場する、
笠置山挙兵から湊川の戦までが
書かれております。

軍人として有能で、政治的な識見も併せ持ち、
そして権力への反骨心も持っていたので
ほとんど無名だった存在が
鎌倉末期から南北朝時代には欠かせない
英雄となったということで、
戦前の影響から正統な評価が
なかなかむずかしかった人物を解明していきます。

面白いのは、足利尊氏を中華民国建設当時の袁世凱に例えたり、
大塔宮護良親王と後醍醐天皇の確執を
中国、唐の初代皇帝李淵と
2代皇帝李世民との確執と比較したり、
千早城攻防戦を第一次世界大戦の独仏戦、
ヴェルダン要塞の攻防に例えたりと、
世界史的な観点がふんだんに盛り込まれていることです。

小説ではないのですが、
なかなか面白い読み物です。
佐藤雅美作品の『百助嘘八百物語』です。

ストーリーテラーは、百助の弟子の辰次。
普請場で出会った2人。
非常に頭のまわる百助老人と
こき使われまくって、
ヒーヒー言っている辰次が、
百助の協力者の浪人3人組とともに
次から次とお金もうけを企てます。

得体のしれない百助と3人の浪人の正体や
辰次の江戸っ子気質など
読ませどころがたっぷりです。

文庫解説がまた、非常にわかりやすくて
解説を読んだ後にもう一回読んでみたくなります。
直木賞受賞作の『吉原手引草』です。

吉原の花魁が突然いなくなってしまった。
そんな事件を、関係者の証言から
突き止めていくというストーリーで、
調べている本人は全く登場しません。

似たような手法は、
浅田次郎作品の『輪違屋糸里』
『壬生義士伝』などでも見受けられます。

妓楼の楼主や、なじみの客、
引手茶屋の内儀や幇間にいたるまで
吉原にかかわる人たちが
それぞれの立場から
失踪してしまった花魁、葛城について
話をしていきます。

ミステリー仕立てになっており、
失踪の謎が解けるのと同時に、
調べている本人の謎も解けます。

吉原の仕組みなんかもうかがえて、おもしろいです。
隆慶一郎作品の『吉原御免状』なんかと
併せて読むと面白いかも知れませんね。
2012.10.10 『冬の標』
乙川優三郎作品の長編『冬の標』。
絵が好きな女子が、絵で独立するまでの
経過を描いた作品です。

裕福な家庭で育ったため、
画塾に通うことができ、好きな絵のために
生きてみたいと思っていた主人公の明世。
しかし、江戸時代という時代の中で
結婚、出産、育児、介護と
夫が早世したために訪れる貧窮で
絵を描くことを抑えなければならなくなります。

しかし、画塾の同窓だった蒔絵職人平吉や
養子に行って立派になった、陽二郎とであうことで
もう一度、絵を描くことへの情熱を取り戻します。

文庫の表紙が、作品にとても関係していて
なかなか凝った形になっています。

途中、これでもかと主人公を襲う不運ですが、
最後にはすがすがしい読後感が
得られるのではないかと思います。
山本周五郎作品の長編『虚空遍歴』です。

元武士で今で言う作曲家をこころざした
中藤冲也の人生を描いた作品です。
正直言って、ヘビーな作品でございます。

端唄を作るのがうまく、
かなり流行させた主人公ですが、
浄瑠璃の舞台音楽を作り上げることを
生涯の仕事と思い定めます。

しかし、舞台音楽でいったんは
成功を収めるものの、さらなる
音楽を求めて、周囲と次々に軋轢をおこし、
最後には、お酒で失敗してしまい
短い人生を終えることになってしまいます。

こう書いてみると、単なる失敗者のように
思えますが、作中の冲也やさまざまな
脇役たちを見てみれば、
色々なことを考えさせてくれる作品なんです。

冲也と旅をともにする、おけいの
独白が合間合間に入ってきて
凝った作りの作品になっています。

シリアスな読み物を求めている方におススメです。
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