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2010.10.27 『彰義隊』
吉村昭作品の『彰義隊』です。
この作品は以前から読みたかった作品で、初読です。
これを読むために『勝海舟』読んだと言っていいです。

タイトルは『彰義隊』ですけれども、実際には
上野にあった徳川家菩提寺である寛永寺の主だった
輪王寺宮が主人公に据えられています。

で、実際の彰義隊が朝廷軍と戦った部分は前半で終了。
あとは輪王寺宮が長い逃避行の末に
奥羽越列藩同盟の盟主になり、
破れて幽閉され、還俗して軍人生活を営むというストーリーになってます。

皇族として生まれながら、朝廷に反する行動を取り
それを心に屈託として抱えながら生涯を過ごした輪王子宮。
新政府のためを願って従軍した台湾戦役で疫病にかかり、
異国の地で生涯を閉じるという波瀾万丈の人生です。

この作品も、かなりハマりました。
そのせいか、かなりのスピードで読み終わってしまいました。
冷静な文体なのですが、入れ込ませるところが
さすが吉村昭調の筆力です。

戦争が人心を荒廃させるということが感じられる場面を
さりげなく忍ばせてあったり、
有栖川宮との確執から人が人を恨むということについて
考えさせられたりと、
なかなか感じるところが多かった印象です。
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かなり久しぶりの更新となりました。
子母澤寛作品の『勝海舟』です。
大作ですので、読破まで時間がかかりました。

勝海舟の前半生がテーマになっていますが、
幕末維新がおもに幕臣の視点で描かれていきます。

1巻では父である貧乏御家人の勝小吉が活躍しますし、
咸臨丸の渡米であったり、海軍塾であったり
江戸城無血開城であったり、
勝麟太郎の活躍が集約されてます。

咸臨丸乗り組みのメンバー吉岡艮太夫や中島三郎助のその後、
勝の私塾の弟子にあたる統計学の杉亨二、
勝の弟子の最たる坂本竜馬、岡田以蔵、
幕臣の大久保一翁、山岡鉄太郎など
そのほかいろいろな脇役が次々に登場して
幕末の世相をいろいろな語り手が出てくるのも
面白い作品に仕上がっている理由の一つと思います。

勝麟太郎自身の食えない性格というのでしょうか
実際にも扱いにくい人物だったんだろうなと思える
性格描写や江戸っ子気質、べらんめえ口調も面白いです。

幕府官僚をこき下ろすというくだりがたくさん出てきますが、
官僚たちは官僚たちで、なかなか有能だったと新聞で読んだことがあります。
この作品の文脈で言えば、全く読み込むことはできませんけどね。
シリーズも半ばに達しています。
塩野七生の『危機と克服』です。

皇帝ネロの時代を受けて、内乱がはじまります。
1年に3人の皇帝がすげ変わり、
続いてフラヴィウス朝が始まるという時代背景です。
そして、『危機と克服』の最後には
五賢帝に数えられるネルヴァが登場し、フラヴィウス朝は終焉します。

作者は、作中に歴史のアマチュアだということをかいていますが
これだけ参考文献を読みこなしているし、
かなり謙虚な自己分析になっていると思います。
また、歴史家の論文などは読んでいてもあんまり
面白くもないので、わたしなんかにはこれで十分ですけどね。

ただ、この『ローマ人の物語』が
本当に面白い作品かどうかというのは
非常に難しいのではないかと思っています。
というのも、あまりにも長いからです。
だからあえて言えば、
面白い個所と面白くない個所があるというのが
ピッタリなのではないかと思います。

という面で言うと、
ここはスルーしてもいいかもしれませんね。
佐藤賢一作品の『赤目のジャック』です。
フランスの農民一揆であるジャックリーの反乱がテーマです。

よく中世ヨーロッパは暗黒時代と言われますが、
その言葉がぴったりな作品の雰囲気で、
陵辱、冒涜といったマイナスイメージのシーンが多いです。
実際にジャックリーの反乱は、アナーキーだったようです。

主人公は、フレデリという聡明だけど臆病な青年。
周りは赤目のジャックの煽動に乗って
あらゆる残虐行為の限りを尽くしますが、
フレデリだけは、理性が働いて踏み込めません。
そんなフレデリは蜂起の中でどう行動するのか。

闇の中に一点の光明があるという主題は分かりますが、
正直に言って、あんまり人に勧められないような感じでしょうか。
キワモノ的な激しい性描写が多いので。

ファンでなければスルーしてもらったらいいと思います。
佐藤賢一作品はやはり『双頭の鷲』や『二人のガスコン』ですよね。
藤本ひとみ作品の『ハプスブルクの宝剣』です。
初めて読みましたが、かなり惹きつけられました。
恋と友情と剣撃というおもしろ黄金パターンに加えて
民族問題がストーリーに陰影を与えています。

ユダヤ人医師のエリヤーフー・ロートシールトが
恋と野望のために片目を奪われ
ユダヤ名とユダヤ社会を捨て、「エドゥアルト」として
オーストリアでのし上がっていくというストーリーです。

恋とは、ドイツ人との恋そして、女帝マリアテレジアとの恋
野望とは、オーストリア人に同化することですが
親友で女帝の夫であるフランツ・ロートリンゲンとの友情や
ユダヤ人差別感の激しいマリアテレジアとの愛憎、
民族アイデンティティで揺れ動く様子が見物です。

時代背景は、18世紀の神聖ローマ帝国に君臨するハプスブルク家が
女帝を戴いたために起こるオーストリア継承戦争を中心に、
その前段階のフランツとマリアテレジアとの結婚や
ポーランド継承戦争、オスマントルコとの国境争いなどで
日本人には少しなじみが薄いと思います。

特に、神聖ローマ帝国の仕組みは皇帝が選挙で選ばれるという
オリエント的な発想では考えられない仕組みです。
こうした予備知識があると、非常に楽しい読書になると思います。

世界史を学ぶ高校生にはぴったりかも知れません。
高橋克彦作品の『炎立つ』です。
以前のNHK大河ドラマの原作でもあります。

1~3巻までは前九年の役、4巻は後三年の役
5巻は源平の時代という構成になっています。
全編を通じて、蝦夷と源氏との葛藤や争いがテーマです。
陸奥と源氏がこんなに因縁めいたものだったのかと
感じられる、大作です。

第1部といえる前九年の役では、
陸奥を実効支配する安倍頼良、安倍貞任たち安倍一族と
物部一族で金山を支配する吉次が
源氏の頼義、義家親子と争います。
そこに藤原経清が絡んでいきます。

第2部の後三年の役では、義家と藤原経清の遺児、清衡が
手を結び、手を切り、奥州藤原氏の地歩を築く話。
安倍一族が滅亡した後に出羽、陸奥を支配する
清原一族の後継者争いが見ものです。

第3部は奥州藤原氏の泰衡と義経、頼朝兄弟の物語。
全盛を誇る平泉が鎌倉と繰り広げる政治闘争です。

で、もちろん圧巻は第1部の安倍と源氏の争いです。
特に、貞任と経清の見事さや蝦夷の誇りということと
義家の武士の誇りのぶつかり合いが見ものになっています。
第1部だけでも読む価値あります。
また、第2部も蝦夷復興のために忍の一字で
耐え忍ぶ清衡の根性が素晴らしいです。

と、ここまでは文字通り寝る間も惜しんで読めるわけですが、
第3部がなかなか進まなくなってしまいます。
着想の妙も、なぜ頼朝が武家政治を構想できたのかということも
非常にうなずけるものがあるのですが、
アタマとココロはちがうのでしょうか?
第3部には感情移入しにくさを感じてしまい、
途端に読書スピードが落ちてしまいました。

高橋克彦作品の中でも、陸奥三部作は面白いです。
ぜひとも、ハマってください。
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