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2010.08.30 『牡丹酒』
『深川黄表紙掛取り帖』の第2弾です。
山本一力の『牡丹酒』。

土佐の銘酒を江戸で売るために
蔵秀、雅乃、宗佑、辰次郎の4人が
土佐まで行って奔走するため
ロードストーリー仕立てになっています。

お酒を売る話は、ほとんどトントン拍子に進みまして
前作のような仕掛けのために知恵を出すよりは
人と人とのつながりや信頼関係などが
話の筋を引っ張っていきます。
特に、宗佑のエピソードが多いのが特徴かなと。

話の前半には、桝の話が出てくるので
後半の伏線かなと思っていたら、
触れられないまま終わっちゃいました。
ちょっぴり拍子抜けでしたね。
でも話の肝にはあんまり影響がないので、
スルーしたら良かったのかな?
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山本一力作品の『深川黄表紙掛取り帖』です。
連作の短編みたいなのですが、
この一冊で完結した長編にも読めます。

解説にあったのですけれど、
短編だけで小説の賞をとれそうになったとのこと。
ただ長編として読んだほうがいいように
個人的には思いますけれど。

お金に絡んだ依頼を若者4人が
いろんな人の助けを借りながら解決していくという筋で
さまざまな仕掛けがほどこされていくのが
楽しい読み物です。
紀伊国屋文左衛門が登場したり、
柳沢吉保が登場したりと元禄時代が舞台になってます。

この作品には、このブログで以前に紹介した
『欅しぐれ』にも登場する渡世人、猪之吉が
かなり重要な役どころででてきます。
住んでるところと名前が同じなので
同一人物だろうと思います。
たぶん『欅しぐれ』のほうが後日談みたいな
位置づけになると思うので、併せて読むとおもしろいかも。
2010.08.26 『白い息』
物書同心居眠り紋蔵シリーズの第7弾
佐藤雅美作品の『白い息』です。

前回に念願の定廻り同心になれた紋蔵。
この『白い息』では慣れないながらも
定廻りの仕事に励みます。
その一方で、例繰り方に戻されそうな気配も。
なんといっても、居眠りはしても仕事はできますからね。

町を駆け回る藤木紋蔵もたのしく描かれています。
なんと言っても、金銭的に余裕もあります。
町廻りの同心の考証も詳細で、
なかなか勉強にもなりました。

さて、紋蔵はどうなるんでしょうか。
それは読んでのお楽しみです。
宮本昌孝作品の『こんぴら樽』です。
これは4つの短編が収められている短編集です。
わたくしごとですが、この作品は
文庫ではなくハードカバーを持っております。
だって、文庫は手に入りにくかったんだもん。

『こんぴら樽』
『一の人、自裁剣』
『蘭丸、叛く』
『瘤取り作兵衛』

『こんぴら樽』は仇討ちに恋の味付けをした物語。
道具立ても恋と撃剣と言うことで定番でしょうか。
作者のあとがきにも、映画の筋立てに見立てた
コメントがあります。

『瘤取り作兵衛』は強い男とその強い男の振りをした男の話。
明智家家臣の作兵衛が武士の意地を貫き、
そのライバル源右衛門は人間の弱さをあらわすという
『宮本武蔵』の武蔵と又八のような感じですよね。

他の作品、『一の人、自裁剣』は殺生関白秀次を
『蘭丸、叛く』は森蘭丸を題材にしています。

再読ですけれども、『こんぴら樽』以外は
あらすじさえ覚えてませんでした。
やっぱり、ポンコツですね。
宮本昌孝作品の影十手活殺帖の
第2弾で『おねだり女房』です。
縁切寺だった鎌倉東慶寺に
駆け込む女がテーマの連作短編集です。

ストーリー展開がひねってあって
非常に面白いシリーズです。
解説によれば、連載していた雑誌が休刊して
シリーズも中断してしまったのが
曲折を経て、この第2弾にこぎ着けたようです。

4つの短編が収録されていますが、
最後の『雨の離れ山』が結構長くて
この作品集の半分弱を占めております。
それだけに、ストーリーが凝っていて面白かったです。
また、有名な「阿部さだ」のような女性お藤と
わがままし放題のおしまの対比も楽しい
表題作の『おねだり女房』など
いろいろなストーリーが楽しめると思います。
安部龍太郎短編作品集『バサラ将軍』です。
「ばさら」という言葉でお気づきの方もあるとおもいますが、
南北朝、室町の時代がテーマになってます。

『兄の横顔』
『師直の恋』
『狼藉なり』
『知謀の渕』
『バサラ将軍』
『アーリアが来た』

作者の初期の作品ばかりが集められてますが、
衝撃を受けてしまったのは『知謀の渕』。
映画で言うところのノワールです。
すごいオチで「マジで?」ってなりました。
竹沢右京亮の悲劇をご堪能ください。

変わり種では『アーリアが来た』も面白いです。
初めて来日した象さんをめぐる話です。

文春文庫の解説にあるように
硬軟取り混ぜた短編集ですので、飽きずに読めました。
いまはインターネットなどで手に入ると思います。
杉本苑子作品の『竹ノ御所鞠子』です。
時代としては『実朝の首』『炎環』などの作品と
重なる鎌倉時代の初期です。

タイトルの鞠子は、鎌倉2代将軍の頼家の娘。
物語は、鞠子の母親が語り手となって
竹ノ御所鞠子の悲劇的な人生をたどります。

この作品を読めば、北条家の権力への執念と
三浦義村の鮮やかな寝返りと源家の末路が
なんともいえない気持ちにさせられます。
まあ、後味は悪いですね、救いがないですから。

力がすべてだった時代。
その犠牲となった存在にスポットを当てた作品としては
着眼点のよさを感じます。
かなりコアな感じなので、興味ある方はどうぞ。
2010.08.22 『かずら野』
今月は気が付いてみれば、かなりの
ハイペースで更新中です。
夏休み様さまと言うところでしょうか。

乙川優三郎作品の『かずら野』です。
この本は、幻冬舎版と新潮版と文庫化がされていまして、
わたくしが持っているのは幻冬舎版です。
解説が違ってるんでしょうね、たぶん。

話の中身は、妾奉公に出された主人公の菊子が
事件に巻き込まれて、奉公先を逃げ出し
流れ流れて銚子にたどり着くというもので、
一緒に逃げ出した富治とのっぴきならぬ
夫婦関係に陥り、そこから脱するまでの心の動きが
丹念に描かれていきます。

非常にヘビーな中身でして、菊子は地道に働きたいのに
富治の傲慢で怠惰な性格から不義理を重ねながら
転々と住むところを変えざるを得ないということなのに
不思議と作品全体としては、そこまで
どんよりとはしていません。
やはり、働く先々で出会う人々の温かさも
描かれていくからだろうと思います。

タイトルの「かずら野」が菊子のターニングポイントになります。
そこは読んでからのお楽しみということで。
2010.08.22 『竹光始末』
藤沢周平作品の『竹光始末』です。
6つの短編が収められています。

『竹光始末』
『恐妻の剣』
『石を抱く』
『冬の終わりに』
『乱心』
『遠方より来る』

表題作の『竹光始末』はラストの展開が
非常に利いていますし
『冬の終わりに』や『遠方より来る』も
話のオチがやっぱり上手く落ちているというか
ストーリーテラーぶりが出ていると思います。

『石を抱く』はオチがないので、なんとなく
落ち着かないまま読後を迎えますけれども
一場面を切り取ったような感じの話だと
納得するまですこし時間がかかりました。
これも作者ならではという感じもします。

この作品集も秀作ぞろいだなと思います。
一読の価値はあるのではないでしょうか。
髪結い伊佐次捕物余話シリーズ第4弾
『さんだらぼっち』です。

所帯を持って長屋暮らしを始めた伊三次とお文。
知り合いの少女にまつわる痛ましい事件をきっかけにして
一軒家に住まうことになりました。

あとがきにあるように、後味がすこし
悪いような話がいくつかあって、
やはり続きが読みたくなってきます。
意図したことではないのかもしれませんが、
作家も商売ですからね。

一話完結ではありますが、
このシリーズはやはり最初から読まないと
主人公をはじめ、登場人物たちのことが
よくわかりませんね。
第3弾までのことが忘却の彼方でしたので
うろ覚えではちょっと魅力が減じるかもしれません。

2010.08.21 『月の松山』
山本周五郎作品『月の松山』。
10の短編が収められています。

『お美津簪』
『羅刹』
『松林蝙也』
『荒法師』
『初蕾』
『壱両千両』
『追いついた夢』
『月の松山』
『おたは嫌いだ』
『失恋第六番』

涙なしには読めないのは『初蕾』。
身分を隠して、実の子供の乳母として
生活していくうちに、心がキマッテくる
主人公のお民の変わりようが感動を呼びます。

下町ものの掛け合いも楽しい『壱両千両』。
先生と呼ばれる主人公千之助が
『あおべか物語』に通じるような気がしてならない
わたくし、がんじがらめマンです。

信長が作品のキモになっている『羅刹』
表題作で余命百日の武士の行動がすばらしい『月の松山』
こうしてみるとこの作品集も
けっこう佳品ぞろいだと思います。

『失恋第六番』のみは現代もので
作品集『松風の門』に収録されている『失恋第五番』の続編です。
戦前の山本周五郎作品を集めた
『ならぬ堪忍』です。

『白魚橋の仇討』
『新三郎母子』
『悪伝七』
『津山の鬼吹雪』
『浪人走馬灯』
『五十三右衛門』
『千本仕合』
『宗近新八郎』
『米の武士道』
『湖畔の人々』
『鏡』
『ならぬ堪忍』
『鴉片のパイプ』
の全13編の短編が収録されています。

少しユーモアのある『悪伝七』と『津山の鬼吹雪』が
この中では、面白かったと感じてます。

解説に書いてあったのですが、山本周五郎本人は
日本婦道記以外の戦前の作品は焼いてほしいと
言っていたということです。
でも、そこまで悪くないできの作品も多数あると思いますし、
今回の『米の武士道』や『湖畔の人々』なんかも
まじめな作品で、面白いと思います。

まあ、わたくしはファンなので、
みなさんはすこし引き算して
読んでもらったほうがよいかもしれませんが。
遠藤周作作品の『決戦の時』です。
坂口安吾『信長』と同時代、同テーマの作品です。

正統スタイルのほうの遠藤周作作品なので
面白みを求めるよりは、生真面目さを求めるに
ピッタリな感じで話は進んでいきます。
ただ、この『決戦の時』は西洋やキリスト教が全く絡みません。
この作者の歴史物では珍しい部類だと思われますが、
いかんせん他の作品をあんまり知らないので、
たわごとなのかもしれませんね。
ファンの人、ごめんなさい。

上巻では若年からの信長の孤独や苦悩を通して
四隣の状況を魔王になることで突破しようとしていく
青年君主が描かれていきますが、
下巻では信長の視点から秀吉や川並衆、お市の視点が
増えてきて、酷薄な信長が浮き彫りになってきます。

自分の身内をどれだけ滅ぼすねんという
ラストあたりのお市の反抗がおもしろいのと
川並衆の乱波働きが詳細なのが特徴ではないかと思います。

まじめな小説が好きな人向けだとおもいます。
2010.08.17 『信長』
坂口安吾の『信長』です。
この本は前々から読みたくて、
やっと古本屋でゲットしました。
安吾の『信長』と言えば、何の本か雑誌か
忘れましたが、評判が良かったことを憶えてまして。

読んでみて、抜群に面白いこと。
坂口安吾の『堕落論』『白痴』は大学の時に読みましたが
まったく記憶に残っていません。
小難しそうな漢字の言葉をカタカナに代えて
セリフも東京あたりの言葉遣い、
なにしろ、テンポがいいです。

この『信長』では、桶狭間までの若い信長が描かれてます。
四面楚歌の状況は、この独裁者の生涯にまとわりつきますが、
元服するなり苦境苦境の連続で
なかなか同情の余地がありますね。
それでも作中の信長は、あんまり屈託なく
さらりと行動しつづけ、運命を切り開いていきます。

一読の価値ありますよ。
『落日の王子』に続く時代を描いた
黒岩重吾作品の『茜に燃ゆ』です。

主人公は万葉歌人として有名な額田王で
大海人皇子と中大兄皇子との
現代で言うところの人倫に外れた恋物語は有名ですね。

この作品も激しい恋を描いており、
セックスシーンも満載でお送りされておりまして、
子供たちにはあんまり勧めたくないです。

『落日の王子』での蘇我入鹿と皇極、斉明女帝との
ラブロマンスが尾を引き、女帝と中大兄皇子は
感情的にも対立していたというところから
百済滅亡から白村江の戦いまでの政治状況は
あんまり語られずに、女帝と皇太子との
感情のもつれに終始しているところに特徴があると思います。
女性視点での物語なので、ある程度仕方ないです。

しかし、大化の改新といい、公地公民とは言うものの
実際にはなかなか進んでいかず
権力争いに終始していたという日本の歴史が
浮かび上がってくるところが、さすがと思います。
黒岩重吾作品の『落日の王子』です。

7世紀の日本のリーダーだった蘇我一族。
強くて、頭がよくて、男らしい大臣蘇我入鹿が
乙巳の変で足元をすくわれてしまうという
教科書でも有名な話ですよね。

当時の国際状況の東アジアパワーバランスや
隋唐の律令制と中央集権化のインパクトが
うまく話につながっていて、読み応えがあります。
入鹿と鎌足は中央集権化に対する主導権争いを
していたという説も興味深かったです。

ストーリーとしては、一本気で短気な入鹿が
権謀の限りを尽くし、決して表舞台に出てこない鎌足に
破れてしまうというもので、
特に後半からラストにかけては緊張感があります。

聖徳太子の子、山背大兄皇子が蘇我一族に滅ぼされますが、
そのあたりの話も非常に興味深いです。
太子の平等思想が当時の豪族たちから見ると異端で
気味悪がられていたということなのです。
わたくし自身も聖徳太子の思想などには
全然知識がありませんでしたので、なんか斬新でした。

古代に興味がある方は、どうぞ。
司馬遷『史記』には、管仲と晏嬰の事績が
おなじ列伝になっているということで、
今回紹介するのは、『晏子』です。

父晏弱と子晏嬰の2代にわたる物語です。
春秋中期の中国。管仲の時代よりもさらに
だいたい100年くらい下ります。

まず、前半は晏弱の活躍。
これが非常に面白くて、血沸き肉踊るという感じです。
晏弱が知恵を巡らせていくタイプの武官なので
面白くないはずがないという感じでしょうか。

後半は、文官だった晏嬰の話になります。
こっちは、斉国内で繰り広げられる
権力闘争のなかで晏嬰が際立つというふうになっていて
晏嬰自身のエピソードは、それはそれで胸を打ちますが、
なかなか晏嬰は登場せず、権力闘争の嵐。

晏弱のところは本人がぐいぐい行動していく反面、
晏嬰のところは崔杼のような権力の権化や
陳無宇のような虎視眈眈と権力を狙うひとの記述が多いので
まどろっこしく感じさせるのかもしれません。

新潮文庫の解説には、晏弱に気を取られると
晏嬰は見えないというようなことが書いてあります。
それは作者の本意ではないというようなことも。
まさしく、わたしはそのたぐいでして
晏弱にしてやられる手合いです。
作者の本意はそっちのけの感さえあります。

ま、非常に面白いストーリーであることは間違いないです。
宮城谷昌光作品の『管仲』です。
中国の春秋時代の名宰相だった管仲の
主に青年時代を主眼に置いたストーリーです。

管鮑の交わりで有名な鮑叔との友情が
具体的な話として小説になっているので、
よく仕上がっていると思います。
というよりも、鮑叔がすごくいい男になっていて
管仲のほうは、陰影の濃い人物になっています。

文春文庫で再読ですけれど、
解説に作者がもともと恋愛小説から
書き始めたとあって、ちょっとおどろきました。
というか、前にも読んでるのに、すっかり忘れてました。
男女のことについては透明感ある文体なので納得が半分、
でも、表現が難解なのですっきりしないのが半分
というがんじがらめマンでございます。

この作者の作品群に共通しますが、
この『管仲』も下巻の後半、斉の桓公即位までが
面白いということで、後半失速気味という印象です。
いつも言ってますが、これはあくまで個人の感想ですよ。
永井路子作品『うたかたの』は、幕末の話です。

この作品は古本屋で仕入れたのですが、
けっこう年季が入ってる感じだったので、古いものかなと思うと
実際は15年くらい前の作品でした。
もうすこし、大事に扱ってよという感じです。

それはともかく、この作品は連作短編集でひとひねりしてあります。
いろんな女性があるひとりの男について関わり合っていく
その中で、男の一生が見えてくるという趣向が凝らしてあります。

才はじけた男が故郷を出奔したあと改心して
国のために奔走し始めると、藩との利害が一致せず
結局追われる身となり、逃亡生活を続けるという
幕末という時代がフィットしてますよね。
圭角の多い人物が年を重ねることで、
丸くなっていくという人物像も重なります。

多角的に、しかも客観として男をとらえるには
複数の主観が必要となりますが、
それが描き分けられていて、
作者の腕を見るような気がしました。
読みたいという方は、
古本屋とかインターネットで入手するしかないようです。
甲賀忍者の惣領が松平の竹千代奪還に悪戦苦闘する
長編『竹千代を盗め』です。

忍者も商売。お金のために苦労をするという
ある意味、これまでの忍者小説を超えた作品です。
冒頭では依頼者である松平家家臣との値段交渉、
仕事にかかってからも値段交渉と
なかなか忍者もつらいですね。

人質からの拒否、松平家家臣の内紛、仲間割れと
主人公の与七郎は頭を抱えながらも
竹千代を取り戻すために奔走しますが
今川家の朝比奈甚三郎率いる「黒笠組」に
捕われて袋叩きにあったり、襲撃されて仲間を失ったりと
なかなか依頼が完遂できません。

ちなみに竹千代は、のちの徳川家康ではなく
非業に倒れた家康の長男、松平信康です。

盗みや撹乱などの忍び仕事の実態がさりげなく会話にでてきて
実際はそうだっただろうな、納得させられたり
この仕事が無事に済んでも、次の大変な仕事がまっていると嘆く
与七郎の姿に共感を覚えたりと、
人間離れしてない忍者の実相がうかがえて、面白いです。

ぜひ、ご一読を。
佐藤賢一作品の『オクシタニア』です。
中世フランス南部のオクシタニア地方で
盛んだった異端キリスト教カタリ派(アルビジョワ派)と
アルビジョワ十字軍にまつわる30年にわたるストーリー。

北部方言を標準語、南部方言を関西弁に書き分け、
章ごとに十字軍総大将、オクシタニアの領主、異端審問官、完徳女と
目線をかえながら描かれていきます。
アルビジョワ十字軍については日本に住んでいると
なかなか身近に感じられませんけど、
その解説も入れながら進みます。

と、こう書いてくるととっつきにくそうですが、
この作品は基本的に異端審問官エドモンと
完徳女ジラルダのラブストーリーです。
物語のクライマックス、カタリ派が撲滅されるあたりは
「悲恋」としか言いようがないです。
わかりやすく言えば、映画などでよくあるパターン、
愛し合う二人が敵同士ということですね。

上下巻あり、かなり長いですし
時代背景がもう少しよくわからないと思いますので
上巻から読むのがもちろん良いと思いますが、
もしかすると、下巻だけでいいかもしれません。
要するに、アルビジョワ十字軍は知らなくてもいいから
ラブストーリーを堪能してくださいってことでしょうか。
山本一力の初期作品みたいですね。
長編の『大川わたり』です。

主人公の銀次は元大工で呉服屋の手代。
博打で身を持ち崩しかけたところで、なんとか
踏みとどまったという、根性のある男です。
そんな銀次が、ねたみなどから罠にかけられていきます。

と書いてみるとろくでもない奴みたいですが
銀次自身はかなりいい男です。
そして、タイトルのように
借金の金主との約束で、大川を渡れません。

山本一力流の仕掛けが施されていて、
けっこうスピーディに話が進みます。
しかし、解説にもあるようにラストは少し強引かな、と。
あとは、呉服屋の主人太兵衛と番頭茂助の
後半の設定がすこし舌足らずのようにも思えます。

ま、軽く読む娯楽小説として楽しんでください。
2010.08.04 『花杖記』
山本周五郎作品は、サクサク読めてしまいます。
今回読んだのは『花杖記』という短編集。
『武道無門』
『良人の鎧』
『御馬印拝借』
『小指』
『備前名弓伝』
『似而非物語』
『逃亡記』
『肌匂う』
『花杖記』
『須磨寺付近』
以上、10作品が収められています。

岡崎ものの『武道無門』、婦道記シリーズの『小指』
短編集『与之助の花』の『恋芙蓉』を
焼きなおして出来がぐんとよくなった感じの『御馬印拝借』
など戦争中の佳品もさることながら、
一番印象に残っているのは『似而非物語』です。

怠け者で「くる眼」という発作をもつ杢助という老人が、
加賀の山奥に隠棲している剣の達人飯篠ちょうゐ斎と
ひょんなことから入れ替わるという話で
ちょうゐ斎でもないのに、武者修行者が
杢助のくしゃみや粗相をきっかけに「奥義の会得」をしたり
「くる眼」で岩見重太郎をやっつけたりと
かなり痛快な「こっけいもの」です。

後半に収録されている『逃亡記』、不思議小説『肌匂う』など
面白い作品や余韻の残る作品などが織り交ぜられています。

最後の『須磨寺付近』は現代もので作者の文壇処女作。
作風がかなり明治大正の「文学」という感じです。
短編集『与之助の花』は13の短編が収められています。
新潮文庫、山本周五郎作品です。
戦前の作品を中心に集められています。

『恋芙蓉』
『孤島』
『非常の剣』
『磔又七』
『武道宵節句』
『一代恋娘』
『奇縁無双』
『春いくたび』
『与之助の花』
『万太郎船』
『噴き上げる花』
『友のためではない』
『世間』

山本周五郎は、題名をつけるのが苦手と自分で言っていた
という話をどこかで聞いたことがあります。
たしかに、そうだなと思う題名もありますね。
たとえば、『奇縁無双』。
似たような筋立てで後年も書いていますが、
『じゃじゃ馬馴らし』とでも
題名をつけたほうがいいような気もします。
ちなみに、シェークスピアは読んだことありません。

この作品集の中では、『噴き上げる花』が出色だと思います。
ユーモアもあり、発明に力を注ぐ主人公というのも
なかなか面白いです。このほかで言うと、
『春いくたび』『与之助の花』も佳品です。

『世間』のみは、現代ものです。

同じような筋立てであったり、テーマであったり、
というような作品が新潮文庫でも
若い番号の巻に収録されています。
そっちを読んだほうが断然面白いと思います
が、
名作が生まれるまでに、
どんな変遷をたどったかが
わかる作品集ということで、
ファンにはたまらん作品集です。
ひょっとしたら文学部あたりで研究対象になっていたりして。
幕末の外交官僚だった、川路聖謨の小説です。
読み方は、かわじ としあきらですが、
ふりがながなければ、読めませんね。

父が元浪人という身分でありながら
勘定奉行や外国奉行にまで出世したという
異例の立身出世を遂げた人であり、
有能な官僚だったようです。
幕末関係の小説をはじめ、文献などでも
名前を見かけることが多いと思います。

で、この作品の感想ですけれども
ちょっと読みにくいと思ってしまうほど長いです。
結構、詳細に時代を追っていくので、仕方ないと思いますが。
それでも、官僚と言うのか組織の歯車の悲哀というか
そういう哀歓も出ていて、読みごたえはあります。

よくあるのは、幕末の幕府の役人が無能だったという
ワンパターンな言説ですけれども、
江戸時代の言論状況とか、鎖国で情報が
少なかったという時代状況を加味しないと
一概には言えないと思っておりまして、
そういう意味でも、この作品は一石を投じてくれていると思います。
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