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2010.05.31 『絵巻』
久しぶりの永井路子作品『絵巻』です。

平安末期から鎌倉時代の初めまでの時代背景で
5つの短編を日記形式の解説でつないでいくという
浅田次郎作品なんかにありそうな
独創的な試みをしています。
この作品ができたのは、1966年だそうです。

『すがめ殿』
『寵妃』
『打とうよ鼓』
『謀臣』
『乳母どの』
のそれぞれのあとに
『静賢法印日記』という創作の日記がつきます。

たとえば、源為朝視点で平忠盛を描いてあったり、
源頼家視点で平知康を描いてあったりと
主人公を同時代の他者の視点を織りまぜながら
描くことで、より臨場感が出ているようです。

武家の台頭が続き、院政が終焉を迎えつつある
京都を主な舞台にしてあります。
平家から源氏へという話はたくさんありますが、
朝廷を舞台にしてあるところが
ミソなんでしょうね。

歴史好き向けの作品集ではないかと思います。
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2010.05.29 『松風の門』
おたふく三部作の最後、『湯治』が収録されている
山本周五郎作品集の『松風の門』です。

『松風の門』
『鼓くらべ』
『狐』
『評釈堪忍記』
『湯治』
『ぼろと釵』
『砦山の十七日』
『夜の蝶』
『釣忍』
『月夜の眺め』
『薊』
『醜聞』
『失恋第五番』
 以上の13の短編があります。

一場面ものが4つもあるのがこの短編集の特徴と思います。
中でも『砦山の十七日』は黒沢映画『七人の侍』の原作です。
映画は見てませんが、
原作は想像以上に
あっさりしているような感じで拍子抜けのような・・・。
完全に先入観ですね。
ちなみに、他の一場面ものは
『ぼろと釵』『夜の蝶』『月夜の眺め』です。
『夜の蝶』がひねってあると思います。

『評釈堪忍記』はこっけいものですけれど、
これが非常に面白いとおもっています。
出てくる人物の名前が
庄司千蔵=承知せんぞとか、富田弥六=とんだやろうとか
ふざけてつけたような感じが好きです。
新潮の解説ではあまり評価されてませんけど。

『釣忍』は、夫婦がお互いを思いあって
別れの危機を乗り越えるというストーリーで、
O・ヘンリーの話を読まなくても、
この話で十分だとわたしなどは思ってしまいます。

この作品群のなかでも前衛的なのは『薊』でしょう。
現在と過去が入り乱れて同時進行していくので
けっこう読みにくいです。
たとえば、2行は現在の話、
次の1行だけは回想で妻が言った言葉
また、現在の弟との会話、といったように。
しかし、回想する男の混乱した心情が
このような形でも表現されているのが面白いです。
しかもテーマが「ゲイ」です。
男の混乱が伝わってきます。

最後に、『失恋第五番』だけは現代ものです。
短編集は、読書が進みますね。
山本周五郎作品の『つゆのひぬま』です。
おたふく三部作の『妹の縁談』が収録されています。

『武家草鞋』
『おしゃべり物語』
『山女魚』
『妹の縁談』
『大納言狐』
『水たたき』
『凍てのあと』
『つゆのひぬま』
『陽気な客』

『陽気な客』だけが現代ものです。

この作品集で一押しは『水たたき』で、
文句なしに泣けます。
主人公のおうらが愛くるしいです。
ハッピーエンドの予感で話が終わるのもいいです。

『おたふく』の時期から少し前にずらしたのが
『妹の縁談』です。
一作目があるから
この『妹の縁談』が生きていると思えました。

表題作で岡場所ものの『つゆのひぬま』は
男のしんじつをみつけたおぶんを
それまでお金をためることを生きがいにしていた
おひろが尻押しするというストーリーで
読後感が非常にいいです。

ほかにも平安ものの『大納言狐』
こっけいものの『おしゃべり物語』など
この作品集もいろいろな話が読めます。

がんじがらめマンとしては
『水たたき』だけでも読んでっていう感じです。
中国の物語を何冊か続けて読んできたので
山本周五郎作品を読みたくなりました。
ということで、
山本周五郎作品の中でも市井ものである
おたふく三部作が収録されている作品集を
続けて読んでいきたいと思います。

まずは、『おたふく』が入っている
短編集『大炊介始末』です。
この作品集は特に、秀逸な作品ばかりです。
山本周五郎という人は、おなじテーマを繰り返し
同じような筋立てで書いた人ですけれど、
その集大成的な作品が収められています。

面白くないはずがないということですね。

『ひやめし物語』
『山椿』
『おたふく』
『よじょう』
『大炊介始末』
『こんち午の日』
『なんの花か薫る』
『牛』
『ちゃん』
『落葉の隣り』

なかでも強烈に印象に残っているのは『こんち午の日』。
最後のセリフで、この「こんち午の日」が出ます。
ここで涙がドワッと出るわけですね。
初めて読んだ時から忘れられない作品です。

平安ものはユーモラスな風刺作品が多く、
『牛』もその中の一つです。
と思えば、男女の機微がすれ違いとなってしまう
シリアスな『落葉の隣り』や
『大炊介始末』のような涙なしには読めない作品もあり、
岡場所ものの『なんの花か薫る』は以前に紹介した
『葦は見ていた』の変形版として読んでも面白い、
というように、
いろいろなジャンルの作品が楽しめます。

この作品集は、多くの人に読んでいただきたい。
4回目に読み返してもまだ、感動するのですから。
宮城谷昌光作品の『香乱記』です。
呂不韋の時代からだいたい50年くらい過ぎた
秦末の時代の作品です。
簡単にいえば、項羽と劉邦の時代です。

主人公は、斉の田黄という人物です。
恥ずかしながら、この作品を読むまで
知りませんでした。

中国史上、漢の建国者である
劉邦とその家臣たちは
脚光を浴びる存在で、ここ日本でも
いろいろな作品に接することができますが、
新潮文庫の解説にあるように
それらの人物像がひっくり返って
みんな悪人に見えてきます。

そんな著者絶賛の人物なのですが、
いまいち、感情移入できなかったのが
正直な感想です。
長編作品を続けて読んでますので
飽きたというのが、大きいと思います。
とは言いつつも
前に読んだ時の印象もかなり薄いんですよね。

がんじがらめマンの面白さ度としては
田黄よりも呂不韋に軍配が上がります。
宮城谷正光作品の長編『奇貨居くべし』です。
全部で5巻もあり、長い旅路でした。

春風篇、火雲篇、黄河篇、飛翔篇、天命篇と
分けてアップしようかとも思ったのですが、
めんどくさくなってやめてしまいました。

宮城谷作品の『太公望』などと同じで
15歳の呂不韋が人との出会いや
次々に起こる事件に巻き込まれながら
成長していく姿を描く物語です。

秦の始皇帝の父かもしれない人として
中国史に興味ある人にはおなじみですよね。

始皇帝があんまり好きではないため、
この作品に接するまでは
呂不韋に対してもあんまり
いいイメージがなかったのですが、
かなり印象が変わったことを憶えています。
(再読です)

『太公望』とおなじような感想ですが、
途中までが非常に面白いです。
商人として活動し始めるくらいまでの
飛翔篇の途中までですね。

あとは、呂不韋が人物を評価するところなど
半分意味がわからないまま読んでました。
あと、性描写をぼかしてあったりするところや
風がどうこうと何かを暗示するような描写など
宮城谷作品には難解なところが
ところどころに散りばめられているように
思えるのは、わたしだけでしょうか。
同じ悩みを持つ人はいるのかな?
陳舜臣作品の『鄭成功 旋風に告げよ』。

大河小説というのか、スケールの大きさ
群像劇では、やはりこの作者は面白いです。
この作品も再読ですけれども
時間を忘れて読んでしまいました。

日本の歌舞伎でも国姓爺合戦で有名な鄭成功、
鄭成功の日本の幼馴染、林統雲が主人公です。

鄭成功が神経質でプライドの高い男として描かれ
父との相克や一族同士の勢力争い、
部下の背反、抗清の争いが実は、
民衆に受け入れられていなかった事実など
プレッシャーや葛藤を乗り越えて
台湾制圧を目指すに至るまでの苦闘を描きます。

ただ、最後の台湾制圧のくだりは
がんじがらめマンにとっては、付け足し感覚でした。
オランダとの台湾攻防戦は
個人的にちょっと物足りない感じがしました。

中国かぶれになったということで
次は宮城谷長編作品にチャレンジしたいと思います。
小前亮という作家の作品です。
作者の生まれ年ががんじがらめマンと一緒で
「へぇ~」と思ったのと
趙匡胤の話というのが、非常に珍しいので
買ってみました。

五代十国と呼ばれる戦乱の時代に
頭角を現す、趙匡胤の宋建国の話です。
若いころから大望を抱いて
英雄のもとで働き、
力で実権を奪い取って野望を果たす
一種のビルドゥングスロマンになっています。

権謀術数の限りを尽くしていくという
ダークな話は趙匡胤に関してはほとんどなく、
文庫の裏表紙にあるように
「瑞々しい」感じはします。

分量が多くなっても、脚色を大胆にするとか
人物の陰翳が濃い人物をもっと書きこむとか
個人的には、もうひとひねりほしいような
そんな気がしないでもありませんでした。

とか言いつつも、
他の作品も見てみたい気もします。
上から目線ですみません。
2010.05.06 『花鳥の乱』
『花鳥の乱』には「利休の七哲」副題がついています。
わたくし、がんじがらめマンが好きな作家、岳宏一郎作品です。

千利休の弟子たちを題材にした
連作短編集のような感じに仕上がっています。
しかしながら、利休が登場人物として
出てくるのはほんの少しだけです。

『風の武士 荒木村重』
『天上の城 高山右近』
『花の下 織田有楽斎』
『早舟の客 蒲生氏郷』
『雨の中の犬 細川忠興』
『加賀の狐 前田利長』
『美の巡礼 古田織部』

利休が権力者秀吉に反抗したように
ここに挙げられた七哲のそれぞれも
反骨精神を持って
戦国の世の中をくぐってきたという意味でも
「利休の弟子」と言え、
短編集のタイトルにも通じるという
なかなか心憎い演出になっています。

講談社文庫の解説では、
『雨の中の犬』をべた褒めですが
『群雲、関ヶ原へ』と非常に重なるところも多いので
どちらかというと、私としては
『花の下』『加賀の狐』を推したいと思います。

権力に屈しない精神は伝えられるものなのか
「類は友を呼ぶ」なのか
非常に興味深い作品集だと思います。
2010.05.05 『乾山晩愁』
葉室麟作品の『乾山晩愁』です。

以前から葉室作品を読みたいと思っていて
文庫化を心待ちにしていました。
やっと手に取れたという作品です。

絵師たちの苦悩や呻吟などが描かれた
5つの作品が収められた短編集です。

『乾山晩愁』
『永徳翔天』
『等伯慕影』
『雪信花匂』
『一蝶幻景』

表題作の『乾山晩愁』が文学賞を受賞したようですが、
わたしは『雪信花匂』が一番印象に残りました。

女流の絵師雪信が抱く恋心、兄の思いやりと破滅
嫉妬心がうずまく狩野派の中で
雪信が狩野探幽から教えられた「気ままに」という言葉。
非常に心に残る短編でした。

このほかの4作品も絵師の人生の哀歓だけでなく
権力との結びつきであったり、
忠臣蔵のエピソードであったり
それぞれの時代が感じられるように
話が組み立てられてあって、かなり面白いです。

他の作品も読みたくなりました
2010.05.05 『十楽の夢』
長島の一向一揆を題材にした
岩井三四二作品『十楽の夢』です。

ぶっとい厚さがこの作品に取り組もうとする
気持ちを萎えさせるような。
分冊にすればまだマシかもしれませんが。

長島の商人、坂田弥三郎
織田信長の家臣、津田掃部助
本願寺の僧で長島に乗り込んできた、光空
この3人の視点を織り交ぜながら
ストーリーが紡がれます。

弥三郎の苦悩や掃部助の主君に対する恐怖など
それぞれの思惑の中で、長島一揆が
単なる宗教戦争とは片づけられない
複雑な様相が露わになっていきます。

悪僧と言っていいと思いますが、
光空が非常に嫌なやつで、
まったく感情移入できませんでした。
それが宗旨が歪められてしまった
本願寺を象徴していたのかなと感じました。

読みやすいとは言えない作品だと思いますが
一揆の内実がわかるので、
チャンバラやドンパチに飽きた人に、どうぞ。
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