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2009.06.29 『重蔵始末』
逢坂剛作品で『重蔵始末』です。
時代小説を書くのが初めてという著者ですが
もともとは、ハードボイルド、ミステリーの作品を
多く手がけていたのですね。

北方探検で有名な近藤重蔵が主人公で
鬼平で有名な「火盗改」の役を仰せつかっているという
史実に基づいた設定になっているようです。

赤い鞭を自在に操り、多くを語らずに犯人を
とっ捕まえるというハードボイルドの主人公みたいな
重蔵になかなか感情移入できず、
読み終えるまでに少し時間がかかってしまいました。
たとえば、21歳ではなくて、40代とかの設定なら
まだ納得できたのかな、と思わんでもないです。

謎解きがけっこうおもしろかったので、
ミステリー好きの方にどうぞ。
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『執念の家譜』は永井路子の短編集です。
表題作のほか、「裾野」「信貴山落日」「群猿図」
「裏切りしは誰ぞ」「関ヶ原別記」「刺客」の
7つの短編が収められています。

はじめの2つは鎌倉時代の話で
「執念の家譜」は三浦一族、「裾野」は曽我兄弟の話。
「信貴山落日」は松永弾正、「群猿図」が長谷川等伯の話で
あとの3つは、関ヶ原と大阪の役の話です。

7つの作品のうち、特に興味をそそられたのは
「裏切りしは誰ぞ」「関ヶ原別記」の2作でした。

「裏切りしは誰ぞ」は、小早川秀秋が主人公で
関ヶ原の裏切りに至るまでの心の葛藤が面白い作品でした。

心の葛藤といっても、小さい頃から猶子として
秀吉夫妻に育てられてきたのに、
秀頼が生まれたことによって後継者になれなかったことが
関ヶ原での裏切りに結びついたというあらすじで
秀秋の心は、はじめから東軍にあったという解釈が
新鮮に感じました。

「関ヶ原別記」は、もともと主従だった
宮部善祥坊の息子長煕と田中吉政が主人公です。
田中吉政の鵺ぶりが非常に面白かったです。
田中吉政といえば、石田三成を生け捕ったことで知られていますが、
元主人の若君である長煕を手玉に取る様子がしたたかです。

奥付を見ると昭和60年刊行の講談社文庫で、
たまたま立ち寄った古本屋で見つけました。
掘り出し物を見つけた感がつよく残りました。
岳宏一郎『天正十年夏ノ記』を読みました。
この作品は、講談社文庫に収録され
その後、がんじがらめマンが「読みたい」と
思った頃には書店に置いていなくて
また、タイミングが悪いのか
ネットでもさがしきることができないまま
半ばあきらめかけていたところ、
光文社文庫に再録され、
すかさず購入したという作品です。

そんな思い入れがあったためか、
あっという間に読み終わってしまいました。
なぜ、講談社は重版しなかったのか、と
感じてしまうほど魅力的な作品です。

公家である勧修寺晴豊の視点から
織田信長を追っていくという手法で描かれます。
勧修寺家は、武家伝奏の家柄として
武家とのかかわりが非常に深く、
祖父は安芸の毛利家に長い間行っていたり、
親戚縁者にも武家には事欠かないところです。

はじめは、やや好意的に信長を見ていた晴豊も
すこしずつ野望を明らかにしていく信長に
信長自身が天皇にとって代わるのではないか
信長自身が神となり、天皇家を下に置くのではないかと
恐れを抱くようになります。
公卿の世界でも一種の信長フィーバーが吹き荒れる中
冷静な目で信長を観察する晴豊の視点が
この作品の大きな魅力の一つです。

将軍義昭、顕如光佐、松永久秀、荒木村重など
信長に反抗した人物の心の推移や
晴豊と村井貞勝との交情、
近衛前久への尊敬と失望がないまぜになる様子など
そうやったんかな、と思わせる洞察があって、
これも非常に面白味を感じるところです。

ちなみに、がんじがらめマンの好きな明智光秀には
「吏僚としては村井貞勝に及ばず、
武将としては羽柴秀吉に及ばない」と
辛い点がついていました。
妙に納得してしまいました。
2009.06.23 『しゃばけ』
畠中恵作品の人気シリーズ『しゃばけ』です。

佐助の犬神、仁吉の白沢、
鳴家、屏風のぞきなどの
「妖」たちと一緒に住んでいる薬種問屋の
一太郎が主人公です。

「妖」たちが一太郎とともに
事件を追っていくのが、なかなか面白く
病弱ですぐに寝込むといった主人公も
なかなか面白い設定です。

文庫の解説にもあるとおり
江戸時代に妖怪がいるというのが
すんなりと受け入れられやすいのだと感じます。

軽く読む読み物として最適です。
『花の生涯』は舟橋聖一作品です。
大河ドラマの原作です、しかも第1回目。
昭和27年の作品ということでもあり、
文章や使われている漢字の読み方なども
今の感覚からすると、馴染みのないこともありました。

がんじがらめマンは、高校の時に
吉川英治の『水滸伝』を読み、
漢字の読み方に悪戦苦闘した記憶があります。
水滸伝の伝の字も当時読んだ本は「傳」でしたから。

『花の生涯』は、幕末の大老井伊直弼を中心に
長野主膳、村山たか女が活躍する様子を描いた作品です。

なかでも、村山たか女は井伊直弼、主膳の主従や
多田一郎という登場人物などを手玉にとりながら
密偵の仕事をやってのけるという、
非常に魅惑的な女性として描かれます。
天下のNHKも、どのような描写をしたのか
気になるところではあります。

井伊直弼の活躍ぶりがすくないことと
長野主膳の軟弱ぶりなどが気になります。
そこが、村山たか女を際立たせていますが
桜田門外の変を「残忍な殺人」と断じるところには
作者の気概を感じました。
高橋克彦作品の『時宗』後半の2冊です。
前半では、時宗の父である時頼が中心でしたが、
後半のうち、震星も戦星も
時宗の異母兄である時輔が主人公になっていると
わたしは、読みました。

この作品は全4冊の分量ですが、
来るべき蒙古襲来に備えて、時宗と時輔が
身内や御所、日蓮とのあらそいを鎮めていくのが震星。
そして、クライマックスは、やはり4冊目
戦星での時輔や謝太郎や佐志房たちの活躍です。

ただ惜しまれるのは、日蓮と蒙古側の武将たちのくだりは
個人的にはあんまりいらなかったな、と。
もしくは、もっと魅力的な人物像で描くとか。
敵があまりに見事ではなさ過ぎても面白みが減じられますし、
日蓮のところも、安達泰盛や時宗がもっと
迷ったり苦しんだりしても面白かったんじゃないか、と思います。
史実とのギャップなどがあって、そうしたくても
できなかったのかも知れませんけれども。

『巻の四 戦星』だけでも十分面白く読める作品です。
高橋克彦作品の大河にもなった『時宗』です。
講談社文庫で全4冊ですが、
そのうちの乱星、連星を今回は紹介します。

タイトルこそ『時宗』ですが、乱星、連星については
主人公は北条時宗の父で鎌倉五代執権の
「鉢の木」でも有名な最明寺時頼です。

一族の内紛や将軍家とのごたごた続きの鎌倉幕府に
二十歳で執権になった時頼が、
蒙古から国を守るために、平和を模索していきます。
鎌倉時代は、権力闘争で血で血を洗うという形容が
ぴったりと言っていいほど、ごたごたが続きます。
その混乱が、国を危うくするという危機感を
時頼が持ち、また、周りの人たちがもつことで
夢や志を共有し、強固にするという展開です。

こういう展開は、東北をあつかった高橋克彦作品にも
みられる傾向じゃないかな、と感じるわけで、
それが面白さにつながっていると思います。
また、ドライな文体と「策」という言葉がよくでてくるのが
特徴なんじゃないかな、と思っています。

時頼亡き後の本当の意味での『時宗』は、またのちほど。
佐藤雅美の直木賞受賞作
『恵比寿屋喜兵衛手控え』の感想です。

主人公の喜兵衛は、馬喰町で宿屋の主人をやっています。
この宿屋は、訴訟事を扱う公事宿でもあります。
そんな喜兵衛のもとに、ややこしそうな事件を
抱えた若者がやってくることからストーリーが始まり
自身の夫婦間の問題や喜兵衛が刺客に襲われたりと
いろいろなことに見舞われるという話です。

はじめは、江戸時代の裁判や宿の制度などが
非常に詳しく紹介されるのが、鬱陶しく感じられるのですが
話が進むにつれ、気にならなくなっていきます。
ストーリーと分かちがたく結びついているので
そうなると思うのですが、
肝心の話が面白くないと、こうはならないでしょう。
このあたりが、直木賞をとる実力なんでしょうね。

登場人物の中でも面白い役割を
はたしているのは、
妻の絹や女中のおふじなどの女性たちです。

作者の半次シリーズや居眠り紋蔵シリーズなどで
慣れてから読むと、さらによみやすくなると思います。
塩野七生作のイタリア・ルネサンス3部作の最終
『黄金のローマ』です。
副題は法王庁殺人事件となっています。

主人公は、フィレンツェから2人してやってきた
マルコ・ダンドロとオリンピアです。
3作目になって、やっとオリンピアの過去が明かされます。
それは、教皇の息子であるピエール・ルイジ・ファルネーゼとの関係。
ふたりは20年来の恋人であり、
枢機卿のアレッサンドロ・ファルネーゼの両親でもあります。

ローマではマルコとピエール・ルイジとの間で
揺れ動くオリンピアの女ごころと
ローマの壮大な歴史に浸るマルコが交互に描かれ
マルコとオリンピアは婚約をするに至ります。
しかし、思いがけなかった
ヴェネツィアのプレヴェザでの敗戦を機に
マルコがCDX(十人委員会)に召還されたのが
オリンピアの悲劇になってしまうのです。

ローマという都市の歴史が詰まっている作品になっています。
作者が言うには、3部作を通じての主役は「都市」。
それが、非常に際立っていて興味深く読めました。
しかし副題が前の2作に比べると少し見劣りがするような気がしました。
内容も、個人的には2作目『銀色のフィレンツェ』が白眉と感じます。

また、解説ではなくて巻末エッセイというかたちで
それぞれの人たちがヴェネツィア、フィレンツェ、ローマを
語っているのもたのしいです。
塩野七生作品、イタリア・ルネサンス3部作から
『銀色のフィレンツェ』、連作の2作目です。
副題はメディチ家殺人事件。

主人公のマルコとオリンピアは偶然に
フィレンツェで再会し
そこでまた殺人事件に遭遇します。
フィレンツェは当時、共和制が倒れて
君主制になったばかり。
殺人事件は、君主であるアレッサンドロ・ディ・メディチの
周辺で起こり、マルコは巻き込まれてしまいます。

この第2部の影の主役は
ロレンツィーノ・ディ・メディチです。
ロレンツィーノが血縁であり、保護者である
アレッサンドロとの関係がぎくしゃくしてしまって
苦悩の末に、第2の殺人が起こるという筋書きになっています。

マキァヴェッリやダンテの『神曲』、ボッティチェッリなど
フィレンツェのメディチ家ならではの伏線や
ロレンツォ・イル・マニフィーコにまつわるエピソードなども
非常に面白くて、イタリアの歴史がわかると
興味も倍増だと思います。

ちょっとルネサンスをかじってから読みましょうね。
塩野七生の小説『緋色のヴェネツィア』です。
副題は聖マルコ殺人事件。
この作品は、ルネサンスイタリアの都市をとりあげた
3部作の第1作目です。

3部作共通ですが、
主人公は、ヴェネツィア貴族のマルコ・ダンドロと
遊女オリンピアということになっています。
ただ、このヴェネツィア編ではアルヴィーゼ・グリッティと
その恋人リヴィアが準主役で、非常に重要な人物です。

最初の場面で、ヴェネツィアのサンマルコの鐘楼から
突き落とされた死体が運ばれるところから話が始まりますが
ハッキリ言って、ミステリでは全然ありません。
ここで紹介しているように
16世紀のイタリアを描いた歴史小説です。

ヴェネツィア外交がいかにしてオスマントルコや
スペイン、オーストリアのハプスブルク家と駆け引きを
演じたか、その過程でアルヴィーゼ・グリッティが
ハンガリー王の座を射止めるという野望を達成していくのか
恋と国を背負った外交、トルコ宮廷の暗闘などを背景に
スリリングに描かれます。
そういう意味ではめちゃめちゃミステリですけど。

西洋史に興味ある方は、読んでみてください。

吉川英治文学賞受賞作品の
宮城谷昌光『子産』です。
中国の春秋時代にあった
鄭という国の執政、子産の親子が主人公です。
上巻では、子産の父、子国を中心に、
下巻が子産を中心にストーリーが進んでいきます。

子国は、武人肌の人で当時絶えなかった戦争に
才能を発揮して、鄭の国で重要な地歩を固めていきます。
ただ、鄭という国が大国である晋と楚の2国間で
あっちへふらふら、こっちへふらふらと
翻弄されますので、それにともなって
子国のような人が向こうで出稼ぎ、こっちで出稼ぎと
非常に重宝がられるということになっています。

鄭という昔は大国だったのに、今では二流という国で
内政でもごたごた続きです。

そこで、下巻ではクーデターで父を失った子産が登場して
鄭の国をうまく運営していく名執政にまでなっていきます。
子産は、父とはタイプが違ってこの時代最高の知識人で
礼を重視した政治で改革をおこないます。

この作品は再読なのですが、
今回も読むのに非常に時間がかかりました。
作者もあとがきで書いていますが
創作をできる限り排除して、登場人物はすべて
架空の人名の人がないようにしていたそうです。

それがとっても重厚な小説にしているのですが、
たとえば、他の宮城谷作品『楽毅』だったり
『孟嘗君』だったり、これまで紹介した作品もそうですが
わくわく楽しいというところがあって、長い作品でも
あっという間に読み終わるという感覚が多いのです。

それから、女性があんまりでてこないのも
『子産』の特徴かな、と思いますし、
血沸き肉踊るみたいなのがけっこう好みのがんじがらめマンとしては
正直、少しニガテな感じがします。
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