上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009.05.30 『屋烏』
乙川優三郎作品の短編集『屋烏』です。
表題作を含めて5つの作品が収録されています。
どの作品も武家にまつわる話です。

なかでも私のお気に入りは『屋烏』と『病葉』です。
『屋烏』は揺枝という女性が主人公。
不運にも両親を早くに亡くし弟を育て上げるため
婚期を逃したという女性です。

揺枝が下駄の鼻緒がきれたことをきっかけに
であった宮田与四郎に恋をするという話。
ハッピーエンドがこの作者には珍しいので
特に印象に残ったようです。

『病葉』は親の介護の話です。
主人公は多一郎という遊びを覚えてしまった青年です。
親が年の離れた後妻を娶り、すこし拗ねているのです。
しかし、突然親が倒れ家も没落してしまいます。
介護に必死になる義母。しかし、義母に秘密があったのです。

この話は伏線が効いていて、短編ながらとてもすばらしい
筋立てになっていまして、不覚にも電車の中で
涙しそうになってしまいました。

これも読んでみてほしい作品集です。
スポンサーサイト
2009.05.27 『喜知次』
乙川優三郎作品で『喜知次』です。
何年か前に直木賞の候補に挙がったみたいですね。
実際、非常に感動しました。

ストーリーは、日野小太郎という小藩の裕福な武士の子が
藩内抗争の中で友人とともに成長するというものです。
しかし、題名は小太郎の妹のあだ名なのです。
その妹は養子ですが、小太郎はほのかに好意を寄せるという
少し込み入った事情があります。
そして、これが非常にあとで効いてくるのです。

再読なのですが、おなじところで涙が出ました。
最後の一章だけは中年になった小太郎が
喜知次のあとを偲ぶということになっていますが、
その一章がこの題名を浮き立たせるというのか
とても感銘を受けるのです。

友情の物語としては、
宮本昌孝『藩校早春賦』『夏雲あがれ』を
思い出しました。
文庫の解説には山本周五郎の『さぶ』が挙がっています。

ほんとうに良い作品です。
2009.05.24 『霧の橋』
乙川優三郎の『霧の橋』です。

元は武家の紅屋惣兵衛という主人公が、
大店に乗っ取りを仕掛けられてしまいますが、
どうやってこれを跳ね返すことができるのか、
父の仇との因縁で武士に戻ってしまうのか
町人になりきれることができるのか
という、ストーリーです。

あらすじだけ書いていても、全然この作品のよさが
伝わりませんけれども、非常に感動的なのです。
まず、父が死んでしまうシーンで始まります。
それがとっても重要な伏線になっていて、
ラストシーンでは、涙を誘うのです。

ひょんなことから入り婿のかたちで
惣兵衛は武士を捨てるわけですが、
家付きの娘である妻のおいととは、
ある事件をきっかけに溝ができてしまいます。
おいととしては夫は武士を捨て切れないのでは、と
非常に不安で、そういう夫婦の心の動きが
話を盛り上げていきます。

商売の話がなくても十分に面白いですが、
紅屋が乗っ取られるか、という緊迫感もあり
夫婦関係の緊張もあるという、かなり盛りだくさんです。

ラストシーンは涙なしには読めませんので
ぜひ、ハンカチの用意を。
浅田次郎の『壬生義士伝』につづいて
『輪違屋糸里』です。

島原の芸妓である糸里が主人公で、
芹沢鴨の暗殺をクライマックスに描かれます。
糸里は土方歳三の恋人として設定されていて
重要な役割をはたします。

この作品でも、たとえば、芹沢の愛人であるお梅や
永倉新八、沖田総司などの独白や行動を
その人物の目線で追っていくことで
事件を重層的に浮かび上がらせる方法がとられ
読んでいて、やはり面白く感じさせられます。
そして、芹沢暗殺のクライマックスになると
テンポが急になり否が応でも盛り上がりました。

文庫の解説を読んでなるほどと思いましたが、
女性目線で新選組をみるというのは斬新ですね。
それから、武士対百姓みたいな構図が
柱みたいになっていますが、もともと
平安時代くらいはイコールだった、
同根だったと考えると
歴史の長さとか時代の違いとかが
重みをもって感じられました。

一読の価値はあると思います。
浅田次郎の手によるベストセラー
『壬生義士伝』です。
これは、書店のおじさんにメチャすすめられて購入しました。
そのおじさんの親戚が壬生寺の近くに住んでいたらしく
新選組が本拠にした八木邸の破格の広さであるとか
豊かな暮らしぶりを聞くことができたという
個人的なエピソードつきです。

南部藩出身の吉村貫一郎親子の生涯を
聞き書きや書簡、独白を織り交ぜて描きます。
話し手がころころ変わりますので
徐々に吉村親子が分かる仕組みになっています。
「人としての道」を追っかけた吉村親子の生涯に
非常に感銘を受けました。
文句なしに面白い作品です。

また、坂本竜馬の暗殺や花屋町の暗殺など
京都での事件や戊辰戦争、
奥羽越列藩同盟に関することなど
歴史の解釈なども作中で語られるのも興味深いです。
個人的には奥羽越列藩同盟について改めて
勉強したくなりました。

まだ読んでない方は是非ハマってください。
髪結い伊三次捕物余話のシリーズ
2冊目の『紫紺のつばめ』です。
すぐに読み終わってしまいました。

捕物余話ということで、2冊目の短編は
捕物に関する話よりも、
登場人物たちの恋の行方だったり、
主従関係だったりにいろんな揺さぶりがかかる
話が多かったように思います。

5つの短編の中で印象に残ったのは『ひで』です。
文庫のあとがきにも、この『ひで』の元ネタが
載っており作者も思い入れがあるんだな、と感じました。

話の筋は、結婚のために職を変えた日出吉が
なかなか新しい職になじめず、
病気になって死んでしまうという
非常に非情な話になっているのですが、
現代でもリストラなんかはしょっちゅう耳にしますので
なんだか身につまされるというのか
考えさせられるストーリーでした。

解説で知ったのですが、このシリーズは
テレビドラマになっていたんですね。
全然知りませんでした。
宇江佐真理の髪結い伊三次シリーズの中から
『幻の声』です。
前から気になっていたシリーズで
古本屋で買いました。

短編の連作でこの『幻の声』は、
5つの短編が収録されています。

お店を持たない髪結いの伊三次が主人公で
定廻り同心の不破の手先として
捕り物にかかわっているという設定です。
伊三次視点と恋人のお文視点と同心の不破視点と
入れ替わりながら、話が進んでいきます。

5つの短編のうち、『備後表』が
とてもよい話で印象に残りました。
伊三次が母親同様に慕うおせいに孝行する話で
不破もいい役回りです。
ほかの短編も面白くて、続きが読みたくなります。

香りを印象付けた文章が結構あり、
また、言葉の言い回しもかなり江戸を意識していたり、と
そういうところも情景を思い浮かべやすくなっている
ポイントになっています。

2冊目もすでに購入済みですので
また、じきに紹介できると思います。
岩井三四二作品の『月ノ浦惣庄公事置書』です。

琵琶湖の北岸にあるという「月ノ浦」と隣の高浦が
境界をめぐって訴訟を争うという内容です。
有力な証拠書類があるにもかかわらず
敗訴になってしまった月ノ浦惣庄。
山門を動かして幕府にまで上告(?)します。
高浦には、月ノ浦に恨みを持つ代官がおり
復讐を企てているという、なかなか
スリリングな展開で話は進んでいきます。

当時の村の自治の様子がよくわかって
非常に興味深かったです。
古文書をもとに作られた話みたいなので
とってもリアルで、こんなカンジだったんかな?と
室町時代の雰囲気も感じられました。

これまでわたくし、がんじがらめマンが読んだ
この作者の作品の中では、一番面白いと思います。
といっても、3つしか読んでませんが。
海道龍一朗の作品『北條龍虎伝』です。
文庫版にするにあたって『後北條龍虎伝』から
改題したようです。
『真剣』を読んでから海道龍一朗作品に
魅せられてしまい、文庫になるのを楽しみしていました。

北條氏康と綱成が主人公で題名にあるように
氷龍が氏康、焔虎が綱成です。
この2人の成長が主題で、河越夜戦までを描きます。
主従の約束を結んだ木刀での試合から、
風魔小太郎を味方につける巻狩りや、
心身ともに傷ついた氏康を綱成が立ち直らせる初陣など
おもに20代までのエピソードに紙幅が割かれます。
そして、河越夜戦でクライマックスというふうに
ストーリーが進んでいきます。

話の筋は『真剣』と同じような感じで進みます。
硬派な漢字の使い方などもそっくり。
小題に年代や場所を英語で表記するのも同じです。
また、宮本昌孝作品の『藩校早春賦』『夏雲あがれ』を
彷彿とさせる青春ストーリーでもあり、するすると読めました。

関東の戦国時代に至る過程の話も
簡潔に書かれていて、勉強にもなりましたし
お勧めしたい本です。
永井路子の大河ドラマの原作
『山霧』を読みました。

主人公は、サブタイトルになっている
毛利元就の妻おかたです。
権謀術数の限りを尽くして
家督相続争いや勢力拡大をしていく夫を
陰でささえる姿が描かれています。
おかたは毛利家が飛躍する厳島合戦の前に
亡くなってしまいます。

輿入れから子供が生まれるまでは
実家からの諜報員みたいな役割をしていて
緊張感ある家族関係です。
また、家臣といえど完全には信用できないなかで
家臣団の粛清や縁戚の乗っ取りなど
ダークなことに手を染めてふさぎこむ元就を
明るく励ます内助の功も、性格の対比で描きます。

この時代の女性の役割や家族関係、
また、永井路子が得意とする政治的駆け引きなど
作者の得意分野も顔をのぞかせています。

分量の割には読みやすい作品です。
永井路子の代表作の一つです。
鑑真にかかわる時代の作品を集中して読んできました。
『天平の甍』が渡航するまでの話であれば
この『氷輪』は渡航してからの鑑真一行にまつわる話です。

主人公が誰かなと少し困るのですが、
「唐招提寺の人々」でしょうね。
仏教に大切な「戒」を持ち込んだ鑑真一行は
藤原仲麻呂の乱や道鏡の台頭といった
権力争いに翻弄されながら
「唐律招提」といわれていた当時の唐招提寺を
すこしずつ大きくしていきます。

メインテーマは仏教の戒律ですが、当時の政治状況が
わかりやすい言葉で書かれていますので
奈良時代の歴史を学ぶためには格好の素材です。
また、鑑真といえば渡航に目を奪われがちですが
日本に来てからは、不遇ともいえそうな日々を送っていたんですね。
唐からやってきた弟子たちの苦労や
政治の道具にしかできなかった日本の仏教界など
視点が非常に広くてスケールが大きい作品です。

中公文庫の解説にも載っていましたが
この『氷輪』は司馬遼太郎の作風に似ているみたいですね。
そういえば、『空海の風景』に心なしか似ている気がしないでもない。
司馬遼太郎ファンも一度、読んでみてください。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。